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Rita / Niji

「本当に苦しい時に作った。だから「Rita」は全部を受け入れてくれたアルバムだと今は思う」。ミナグチが振り返った。2ndアルバム「Chemical Fiction plan」を完成させてからわずか半年後、2012年12月にALCOHOL AND PUBLIC HEALTHは3rdアルバム「Rita」9thシングル「Niji」をリリースする。バンド活動の全てを楽曲製作に充て、ひたすらレコーディングを続けた半年はまるで下書きがあったかのように「Rita」と「Niji」を異例とも言える早さで完成させてしまった。

「Rita」は今までのどのパブヘルよりも感情的だ。それはフィクションやドラマのように綺麗な脚本の付いたストーリーなどない作り手のドキュメンタリーであり前衛的な感情を鮮明に刻んでいる。パブヘルが後ろを振り向く事無くただひたすら前だけを向き続け追われる様に完成させた「Rita」はその刻み込まれた多くの"生"の感情が傷む前にどうしても完結させたかった一枚ではないだろうか。

Rita/Niji

メンバーに聞いた、「Rita」全曲解説。

「Rita」を完成させた今、ALCOHOL AND PUBLIC HEALTH演奏陣にアルバムの収録曲を語ってもらった。

01|パストイニシエーション

マスダ|初のインスト曲からのスタートです。綺麗なギターの演奏から始まるこの曲も聴いてくうちに不快音やノイズからきっと不安な気持ちにさせるような曲です。

カネコ|俺の知らないうちに出来ていたインスト曲だ。この曲をどういう経緯で作ったのか俺にとっては謎でちょっとシュンとした。

アライ|斬新でしたね。ギターのフレーズが特に印象に残ってます。この曲で始まるという所からあぁ、このアルバムは違うな!と感じざるを得ないです!


02|スロースケルター

マスダ|この曲のギターは最初すべてアドリブで本番レコーディングを進めようとしてました。普通では考えられないけどそのスタジオテイク的なラフな感じを表現したくて。結果、固まった演奏でレコーディングしたんだけどノイズやハウリをわざと入れてスタジオ一発録りのようなすごくバンドサウンドに近い雰囲気に仕上がっています。

カネコ|うちのバンドで一番ローテンポな曲、ベースは下地として演奏しています。単音楽器という枠を超えてあえてパワーコードなども使っているので是非聴いてもらいたい。

アライ|ダウナーな雰囲気が印象に残ってます。弦楽器のブレーキングとバスドラの絡みが気持ち良い具合に仕上がっています!バスドラの音もこの曲ではかなり主張の激しい個性的な音となっています。


03|ブービー・ブービー(BUBY BUBY)

マスダ|耳に残るような演奏を心がけて作りました。色々と模索しながら製作したこの曲も完成してみればとてもまとまりのあるバンドサウンドになってると思います。スタジオでやったら絶対盛り上がると思うので早く実現させたいですね。

カネコ|王道なパブヘル調のゴリゴリロックです。洋バン的な雰囲気で技術ではなく重さ、硬さで聴かせる一曲だと思います。きっとこういう路線が好きな方もいると思いますので聴いてみて下さい。

アライ|この曲はイントロから良いノリで始まってますね!全体的な面で見ても良いノリに仕上がっています。バスドラの刻みやスネアのタイミングがとても心地良い。スタジオライヴで早くやりたい曲の1つです。内から盛り上がる何かを感じる曲ですね!感想のギターの演奏もとても印象に残っています。最後のサビは特にやっていて興奮を感じずにはいられなですよ!


04|キャンディ

マスダ|ベースとボーカルから始まるこの曲は徐々に沸々と盛り上がるような曲構成になっていてそれがとても気持ちいい曲になってます。歌詞もサイトで一時期公開してましたが、すごく重く、中性的ではあるけどすごく意味ありげな…。曲の雰囲気、歌詞、演奏全てが今のところ一番のお気に入りです。

カネコ|演奏の下地をベースが作った曲です。このバンドで出来なかった3符の曲…どうにか形にしました。正直このバンドには3符はあまりにも暗いのでなかなか採用されませんでした。今回のアルバムで私的には最高の曲だと思っております。

アライ|最高なのが二回目のサビの後の展開ですね。綺麗なギターの演奏とドラムをどう絡ませるか悩みましたが、結果的には感情をぶつけるような演奏になっていまいました。この曲は基本的に下地に徹しているような面がありますが、スタジオで理性を保てるかどうか…。

05|サノバビッチガール

マスダ|デモテープ作りからベースと色々話し合って模索して、最終的に仕上がった形が一番よい状態でできたかな。色々試してみたけどやっぱりこの曲にはシンプルに奏でるのが一番合っているのかなと思いました。このアルバムならではの気だるい雰囲気も最高に出てる一曲です。

カネコ|下品なロック。その路線でこの曲ほどはまるものはないと思います。心揺さぶる重低音、浮ついたメロディ、卑猥な空気がとても素敵な曲。アルバム製作で一番はじめに手がけた曲で音作りにすごく苦労しました。

アライ|サビのフレーズに苦労した印象が強いです。この曲は特にサビの繰り返しが多かったし、妥協はしたくなかったのでなんとか乗り越えました。個人的にはPVを作りたいくらいに思い入れがありますね!もちろんスタジオにいって気持ちよく演奏できる曲の1つに入ります。


06|ピンクのブラボー

マスダ|全体を通してテンポのよさとノリのよさは今まで作ってきた中でも一番だと思う。スタジオで大音量で合わせたらすごい気持ちいい曲。

カネコ|もうなんとも言えない速さ。うちのバンドは速い曲というのはなかなか採用されない傾向がありますが、これは全員が納得いく出来でした。はじめて5弦ベースを使った曲で、音の重みがかなりあると思います。

アライ|久々にアップテンポでしたね。Aメロが3回ありますが、3回とも演奏を変えています!徐々に激しさを増していっている所が感情とリンクしてしまっていますね…。今のところスタジオライヴでやりたい曲No.1の曲ですね!Aメロに関しても、フィルに関しても、とても気持ち良いですね!後は体がついていってくれれば…。とりあえず、ブラボーちゃん最高!!


07|セクシーな煙

マスダ|気だるい雰囲気とタイトル通り、怪しげな雰囲気が混ざり合った曲になってます。その演出は俺だけで普通に考えたら絶対出てこないような…。このアルバムには欠かすことのできない最強な曲になっています。

カネコ|ラフプレーが目立つ曲。だけどそれがコンセプトなんでそれでいい。ベースはやりたい事っていうよりもうただ単に暴れてるだけの楽器になってるので全うな音楽が好きな方には受け入れてもらえないしれません。最後に拍手が収録されてます。

アライ|合間合間のタムの絡みが良い雰囲気に仕上がっています。音質の面を言えば、とても良くない出来となっていますが、それが逆に良い。この曲だからこそのこの音質が逆に最高なのですから。特に最後の雰囲気が広がる感じがたまらない。間奏のぐちゃぐちゃした感じもたまらないですな!


08|スターリン

マスダ|一番最後にレコーディングを終えた曲だけにやっぱり一番印象に残ってますね。スターリンの音作りは本当に苦労して、どうしたらドラム、ベース、ギターがよく混ざり合えるかをお互い話し合った。聴いてもらえばわかるけどイントロからこのアルバムに合ったスタジオ録りのような荒々しい曲調がわかっていただけると思います。

カネコ|単調至上主義のミナグチに作ってと言われて下地を作った曲。色んな事情があり、私がめっちゃシュンっとした…そんな曲です。うちのバンドには珍しいあっさりした綺麗でストレートなロックです。このアルバムの最後は悲しいバラードではなくこういった曲で終われてよかったと思います。

アライ|音作りに苦労した甲斐あって最終的に良い具合に音がまとまったと思います。普段はあまり閉じたハイハットの音をあまり目立たせることがなかったのですが、この曲に関しては例外と言えますね。最後を飾るにふさわしい出来です。先ほど言ったハイハットの刻み、静かなパートでのタム、広がる雰囲気、音量のバランス、色々苦労した面はありますが、最後のサビで昇天します。


混沌とした「Rita」に鮮やかな「Niji」。

「Rita」は混沌としている。それとは対照的にジャケットは鮮やかなのは「Niji」があるからか。それとは反対に「Niji」のジャケットは色がないのはやはり「Rita」を意識してか。「Niji」はシンプルな構成でリスナーに解釈の余地を与える。虹は端から端、始まりから終わりまで虹と言う存在で空にあるように「Niji」もイントロからアウトロまでその圧倒的世界観を広げる。3分弱と短い尺を聴き終えた時、空に消えた虹のような得体の知れない感覚がきっとリスナーにも感じられるだろう。それが何なのか、「Niji」とは「Rita」とは。解釈の余地は聴き手の数だけある。


文:Mitsuo Inagawa